【深夜Ⅲ/日暮れ/自室】 - レオーネ

2017/08/11 (Fri) 16:47:14

(あの悲劇から一体どれ程の夜をこうして無駄に重ねてきたろう。ぼんやりと思考を巡らせながら窓の外を眺める。自室にまで射し込む斜陽が村全体を染め、現実と空想の境を曖昧にしていくような気がした。目蓋を閉ざし、平和な日々へと立ち返る。父母の暖かい挨拶と笑顔、買い出しの最中に交わす村人との会話、そこに混じるアシュレイの声と無意味に突っかかってみせる己が言葉、そして、仲が良いと笑うアリア。嗜める様な語を紡ぐライリーは夜、酒場にも顔を出してくれた事があったような気もする。喧騒の中で恋人である彼を見付けたエルザの微笑みに此方まで小さく笑った折り、ライリーを冷やかしにいく父親に母共々呆れた視線を向けては、常連客に混じって大笑いした……これからもずっと、こんな日が続いていくのだと。確証もなく未来を信じていたあの平穏で少しつまらなくて、けれどかけがえのない日々を思い返したところで、階下から己を呼ぶ養父の声が耳朶を叩いた。はっと目を開き、眦を僅かに濡らす生暖かい感触に気付いて。震えそうになる声を叱咤するが如く喉元に手を当て、細い呼気の後、部屋を辞した)